Storytelling

写真と言葉たち

駅前交差点の横断歩道にて

動かぬ車列が見守る静寂の舞台に
黒いスラックス、黒いマスクの女性が現れた。


右折する車が通り過ぎた後
青になった横断歩道を歩むその姿は、
白いラインをひとつずつ踏み越えながら行く、
白日夢の地図をたどる探検家なのだろうか?

車窓越しの視線を気にも留めず、
その一歩一歩が確信の足音となる。
焦らず、迷わず、急ぐでもなく、
ただ、自分のリズムで未来を紡ぐ。


彼女は目の前の白いマークを、
ひとつづつ、ひとつづつ
丁寧に、確実に、
ひとつづつ、ひとつづつ
クリアしていく。


夢の切れ端が風に舞う交差点ステージの中で、
彼女は過去を背に、今を踏みしめ、未来を引き寄せているヒロインだ。


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雨上がりの交差点にて

雨上がりの交差点を眺めていたら、
一人の少年が、私の目の前にやってきて、
停めていた自分の自転車に乗るためなのでしょうか、
テキパキと何やら作業をやり始めました。


どうやら傘をしまって、自転車に乗る準備を
始めたようです。

おそらく全ての作業は一つのルーチンになっていて、
何度も同じことをしているのでしょう、
どの動きも非常にスムースでした。


なぜ彼がその様な事をしているのかは全く分かりませんが、
彼は自分でやるべき事を自分でしっかりとやり遂げる事に、
真っすぐに向かって突き進んでいる事は良くわかりました。


間もなく、見ていた私には全く気に留めるでもなく、
彼は私の横をすり抜けてペダルを漕いで去っていきました。

エンディングのステージ

夜の新宿副都心の一角には不思議な通路空間がある。
向こう側へ続く広くて長い無機質な通路は、照明でとても明るい。
昼間は運搬トラックなどが荷物をビルに運んでいる通路なのだろうか?
しかし、今は利用されることもなく通る人さえまばらだ。

すると、一人の女性が長い通路を抜け出てきた。
きっと彼女は、この場所を自分の一日のストーリーのエンディングのセリフを語るステージとして利用したらしい。


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水わだちの精霊

雨が降って汚れた空気や汚れたアスファルトの泥を洗い流したからなのだろうか?いつもの帰り道の交差点は、車のライトに照らされてなんだか煌びやかな雰囲気が漂っていました。


歩道を渡り終わったあたりに目には見えない何かがある様な気がして、少し立ち止まりファインダーを覗いて、いいところへ車が来た時にシャッターを切ってみました。


確かに白線とか、マンホールの蓋、歩道のラインとか、タクシーの動いている距離感とか、当たり前だけど生々しく現実の一部を切り取っている事は確認でき、改めてタクシーの運転手も歩行者との距離を十分に取った場所を通過していることは確認できる図にはなっていますよね。(・_・D フムフム。


でも、なんだか少し気になるところがあります。それは動いているタクシー。あたり前だけどシャッターは長めだったのでボケてはっきりとは映っていません。(、、、ところで、さすが、ブレ防止機能が利いてアスファルト面がクリアーですねえ。)でも、よく見るとタイヤの動いた後ろの処、に何やらモヤモヤしたものが写っています。何だろう、と思い拡大してみました。それがこれです。


これはシュゴイ!タイアの動いた後に水がはねてこんな模様が出来ていました。


これを科学的に考察すると、まずタイア幅の外側部分が水を左右に飛ばしてその次にタイアの中央部分が水を真上に引っ張って飛ばす、という現象が起きている風です。


本当に一瞬の間にしか現れない現象をハッキリとカメラはとらえていました。
そんな訳で、この現象の事を「水わだち」と勝手に命名しました。


人の目では見えない図をカメラを使えば見える訳で、この図は、神のいたずら、では大げさすぎるので、たぶん、水わだちの精霊が気が付いた人にだけ見せてくれた一瞬の映像なのかも知れませんよ。


最初に感じた煌びやかさの理由が写真を撮ってみて納得です。
しかし、このLUMIX GX7MK2 よく映ります。

電脳の集会

秋葉原の街角に、
夜の帳がゆっくりと降りてきたその一角に、
スマホの灯りを見つめる人たちが集まっている。
顔を上げることなく、指先を滑らせ、
何かを待ち、何かを探し求めるように。

誰もが一様に画面を見つめ、
ガードフェンスに寄りかかる者、
ビルの柱に背を預ける者、
通路の脇に立ち尽くす者。
まるで、見えない命令に心を捧げ、
次の一手を待つ駒のように。


どこかしら無機質な表情のまま、
ひたすらスマホをシッカリとホールドしている。
きっとその指示が届いたら、疑いもなく、
何かを始めるだろう、何かに従うだろう。


ここには、日本語も英語も混じり合い、
文化も国境も解け合っているようだ。
女性も、男性も、誰もがひとつの画面に集い、
現実と虚構の境目を曖昧に漂っている。


秋葉原の街角の秋の夜、
電脳の囁きが響き渡る。


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