Storytelling

写真と言葉たち

ゴールの的へ突進する女性

目の前で突然走り出した女性がいた。
どうやら、赤信号になる前に横断歩道を渡り切りたいと思ったのだろう。

彼女は、ふと気づくと反対側には、一人の男性の背中に描かれた丸い模様が目に飛び込んできたのだ。 それは、まるで彼女自身に向けて放たれたゴールの的のように輝いて見えたのだろう。


彼女のダッシュは、その瞬間に始まった。
まっすぐ、その「的」に向かって、風を切り裂くようにスタートを切った。


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彼女が目指したのは、単なる横断歩道の向こう側ではなく、 まるで自分だけのゴールに向かって突進する、一瞬の勝負だったのだ。


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躍動する都会を創り出す現場と、その住民たち

地下鉄出入口前の広場に、工事中のクレーンのシルエットが浮かび上がっていた。


街の明かりが徐々に灯るトワイライトの空に浮かぶそのシルエットは、「ここが躍動する都会を創り出す現場だ」と、静かに語りかけているかのようだ。


その時、遠くから一人の女性が凄まじい勢いで駆け寄ってきた。
カメラの存在など気に留める余裕もなく、都会の風に乗り駆け抜ける。


彼女が私を通り過ぎるその瞬間、今度は男性が脇から現れ、静かに歩みを進めた。 スマホのマップに導かれ、彼は地下鉄の出入口を見つけたようだ。


彼らの動きは、まるで都会のリズムに溶け込み、「私たちもこの街の一部だ」と、アピールしているかのようだ。


クレーンと、駆け抜ける人々、すべてが一つの都会のシンフォニーを奏でている。


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恵比寿駅近くのT字路風三差路


配達員が緩やかな坂道を、
ゆっくりと大きな荷物を運んでいる。
彼の足取りは慎重で、
そして確かな一歩一歩が、
目的地へと向かっている。


すっかり仕事モードから切り替えてこれからの事、
今夜の食事のメニューをどうしよか、
などとあれこれ考えながら、
マスクをした女性は急ぎ足で駅へ向かって行くようだ。


親子連れ風の3人は、これから駅ビルのレストランへでも行くのだろう。
子供たちの瞳には、夕食の期待と今日の冒険が輝き、
父親の顔には、愛情の微笑みが浮んでいる様だ。


そんな姿をファインダーで見ていたら、
さっきまでゆっくりと坂道を降りてきた
塾帰り風なスケートボードの少年が、
私の方へ近づいて来たと思ったら、
アッという間に元気に通り過ぎて行った。


ここは、
人々の小さな物語が重なり合う、
恵比寿駅近くのT字路風三差路


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黒のペアたち

道の反対側にあるショーウィンドーの中に、
静かに並ぶ黒のペアのマネキンたち。

その前を通り過ぎる黒のファッションの男性。


彼の姿は、一瞬だけガラスに写り込んで、
まるでマネキンたちと並ぶもう一つの黒のペア。


一瞬の偶然が織りなす、不思議な調和の中で
二つの黒いペアが一つに溶け合い昇華する。


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視線の共鳴

地下フロアを見下ろしながら、スマホを見ている女性。
きっと、友達とメールをしているのだろう。

すぐ脇のエスカレーターで一人の男性が地下へ下りようとしている。
その視線は何か気になる様な感じで彼女の方へ向かっている。


この瞬間、スマホに夢中の彼女と、その彼女を見つめる男性、そしてその光景を見守る私たち。この小さな空間の中で、私たち全員の視線が次元を超えて一つのラインで結ばれ、一瞬だけの共鳴が生まれたようだ。


もちろん、この一つの瞬間は直ぐに消えてしまう。
でも、この事は、私たちとは違う誰かとで何度も永遠に繰り返されるだろう。
十年後も百年後も


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