道の反対側にあるショーウィンドーの中に、
静かに並ぶ黒のペアのマネキンたち。
その前を通り過ぎる黒のファッションの男性。
彼の姿は、一瞬だけガラスに写り込んで、
まるでマネキンたちと並ぶもう一つの黒のペア。
一瞬の偶然が織りなす、不思議な調和の中で
二つの黒いペアが一つに溶け合い昇華する。
道の反対側にあるショーウィンドーの中に、
静かに並ぶ黒のペアのマネキンたち。
その前を通り過ぎる黒のファッションの男性。
彼の姿は、一瞬だけガラスに写り込んで、
まるでマネキンたちと並ぶもう一つの黒のペア。
一瞬の偶然が織りなす、不思議な調和の中で
二つの黒いペアが一つに溶け合い昇華する。
地下フロアを見下ろしながら、スマホを見ている女性。
きっと、友達とメールをしているのだろう。
すぐ脇のエスカレーターで一人の男性が地下へ下りようとしている。
その視線は何か気になる様な感じで彼女の方へ向かっている。
この瞬間、スマホに夢中の彼女と、その彼女を見つめる男性、そしてその光景を見守る私たち。この小さな空間の中で、私たち全員の視線が次元を超えて一つのラインで結ばれ、一瞬だけの共鳴が生まれたようだ。
もちろん、この一つの瞬間は直ぐに消えてしまう。
でも、この事は、私たちとは違う誰かとで何度も永遠に繰り返されるだろう。
十年後も百年後も
通りを抜けて信号を待っていると、すぐ脇から大きな話声が響いてきた。
どうやら、どこかのお店の女性がお客様風な男性に対して、
駅への道案内をしているようだ。
彼女の掲げている手が駅の方向を示している。
よく見ると、掲げている彼女の指先はキュッと曲げられていて、
伝えたい真直ぐな彼女の気持ちがしっかりと込められている様だ。
表参道の午後の光が柔らかく降り注ぐ中、
一人の女性がタクシーを呼ぶために車道に立っていた。
よく見ると、彼女の背中を隠した日傘から、
手だけが、その中から見えていて、
まるで日傘から手が生えているような奇妙な光景だ。
もしかして、日傘が自ら意思を持ち、
空へ向かって合図を送っているのだろうか?
まもなくタクシーがゆっくりと近づき、
まるで何事もなかったかのように、
その手は再び日傘の中へと戻った。
クレーンを越えて
力強い意志を持つかのように
ゆっくりとゆっくりと
確実に動いていく白い雲
クレーンの後ろから
いろいろな場所から
集まってきた薄雲たちが
その後についていく
拡大図
夏の日差しが照らす中を
さすがに暑すぎるのか
ゆっくりとゆっくりとした
足取りの、小さな子供
夏の日差しを避けて
力強く前へ急ぐ母親は
もう一人の子供の手を引きながら
その後についていく
兎に角はっきりと言えることは
今年の夏は暑すぎる
とても暑すぎる
そして、いつかこの暑さも終わるだろう
そして、白い雲も小さな子供たちも
もう二度と、こうしてここへは来ないだろう